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2010.12.27、12.29

100%はあり得ない

 100%はあり得ない…と、いつもそう思う。

 まったく人間というのは不完全きわまりない生き物であり、多かれ少なかれ常に間違いを犯している。その事実を「いいや、自分のやることはいつも100%確実で間違えることはない」などと自信を持って突っぱねることができる者は滅多にいるまい。

 と言っているそばから「いいや、そんなことはない。私は常に100%を期しているし、ほとんどの場合それを実践できてるよ」という声がどこかから聞こえてくるようなので、ここはひとつ世の中の不確実さを、20世紀を代表する哲学者(数学者でもある)の1人、バートランド・ラッセルの力を借りて示しておくことにする。

 バートランド・ラッセルはその著書『哲学入門』をこんな風に書き出している。

 理性的な人なら誰にも疑えない、それほど確実な知識などあるのだろうか。

 そして、テーブルを例に以下のような論を展開する。

 目には長方形で茶色く光沢があるように映り、触ればなめらかで、冷たく硬い。たたけば鈍い音がする。このテーブルを見、触り、その音を聴く人なら、誰でもこの記述に同意するはずだから、何の問題も起こらないと思われるかもしれない。だがもっと正確であろうとすると、とたんに面倒なことになる。テーブルは全面にわたって「本当に」同じ色をしていると私は信じている。しかし、明かりを反射している部分は他の部分よりも明るく、そのため白く見えるところすらある。自分が動けば明かりを反射する場所が変わるため、テーブル上の色の分布も変わることも、私は知っている。このことから、人々が同じテーブルを同時に見るなら、まったく同じ色の分布を見る人はいないことになる。

 つまりテーブルの色は、見る人の立ち位置によって変わるのだ。ある人にとっては茶色のテーブルは茶色以外の何色でもない。ところが同時に同じテーブルを反対の位置から見ている人がいたとしたら、その人の目にはテーブルは違う色に見えているかもしれないのだ。

 テーブルの見え方だけではなく、さまざまな社会問題でも同じだ。いろいろな主義主張をする人たちの立場はみな違う。そのため問題の捉え方が異なったり、解決の方法が異なったりすることはごく当たり前のことなのだ。

 私たちは自分にとっては100%正しいと思える意見も、立場の違う人にとっては100%正論ではないことをもっと重要視すべきだ。

 だが残念なことに、世の中ではただ自己主張を繰り返し、自分の意見とは異なる主張は一顧だにしない人が増殖しているように見える。要するに聞く耳を持たないという奴だ。
 自分の意見をはっきり主張することは何ら問題ない、と言うより大いにやるべきことだろう。問題は反論されたり、異なる意見が出て来たときである。

 私は、反論や自分と異なる意見は歓迎すべきものと考えている。自分の考えが「100%正しくはない」という前提に立てば反論や異なる意見は、自分の考えの足りない部分を補ってくれる可能性があるからだ。相手の話をよく聞き、考慮すべきかどうかを十分に検討してみる。それが反論や異なる意見に対する正しい態度だろう。そんな道理をわきまえた人との話し合いは、ほとんどの場合うまくまとまる。

 最悪で始末に負えないのは、自分が間違っているかもしれないということを考慮に入れることができない人だ(しつこいようだが要するに聞く耳を持たないという奴)。

 そんな連中はこう考える。
 どう考えても私は正しい。→ どうしてこの人は私の意見を理解できないのか。→ おそらく理解力がないのだろう。→ 阿呆に話しても時間の無駄だ。

 上記のような思考回路を持つ相手の場合、いくら向こうの立場を尊重しても無駄だ。こちらの立場を理解しようとはせず、図に乗って論破しようとしてくるだけだからだ。そして話し合いはいつも平行線のままで終わる。

 本当に残念なことに、近頃そんな人たちがとても多いのだ。おそらく私は多くの人から阿呆だと思われているに違いない。

 さて、ここまで読んでみて、聞く耳を持たないということに「多少思い当たるな」という人は多いに違いない。そんな人にはこれから、聞くということをもっと重要視することをお勧めする。

 また「自分は大丈夫、ちゃんと人の意見も聞いている」と思った人も多いだろうが、そんな人も注意してもらいたい。

 ひとつ質問がある。

 「よく他人を阿呆だと感じていないだろうか?」

 覚えのある人は「どう考えても私は正しい」と思い込む前に、もう一度よく考えてもらいたいのだ。

 「100%はあり得ない」のだから……。

2010年12月29日(水)
文責:NPO法人公共情報センター・福地敏治
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