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アート 現代アート トランスフォーメーション 東京都現代美術館

東京アートミーティング トランスフォーメーション
2010年10月29日(金)〜2011年1月30日(日)/ 東京都現代美術館

 展覧会テーマは「トランスフォーメーション(変身・変容)」。人間とそうでないものとの境界を探るというもの。

 この刺激的なテーマのもとに、15カ国21組のアーティストが参加し表現するというのだから期待感はいやが上にも高まります。

記者会見の画像
参加アーティストが多いので記者会見はズラリ勢揃いという感じでした

ズラリ勢揃いという感じの記者会見

 少しだけ上の写真で気になるアーティストに触れておきます(小さく見にくくてすみません)。一番右に座っているでかいオジさんがヤン・ファーブル氏。かの有名なファーブル昆虫記の作者ジャン=アンリ・ファーブルを曾祖父に持つアーティストです。美術家、舞台演出家、劇作家、振付家など多彩な才能を持つファーブル氏の今回の出品作品にはかなり驚かされます。

 中央あたりにいる赤っぽい服のお嬢さんがスプツニ子!さん。座っているのでわかりづらいと思いますが、背が高くスタイル抜群、完全にモデル体形です。そのご本人自身のヴィジュアルからも作品を一見した感じからも、「アート界のアイドル狙いかっ!」と誤解しそうですがさにあらず。作品コンセプトはきちんとしているので要注意です(彼女は頭脳もとんでもなく優秀らしい)。

 その右隣にいるごく普通(失礼)の青年が、七大陸世界最高峰登頂の最年少記録を保持していたことがあるスーパーマン石川直樹氏。近くで見ると本当に小柄でスリム、優しい感じの人なのでまったく超人には見えません(重ねて失礼)。

 そして一番左でマイクを持っているのが、東京都現代美術館チーフキュレーターの長谷川祐子氏。彼女は黙っているとおっかない感じですが、笑うと優しい雰囲気になります(まったくの私見ではありますが…)。今回はチーフキュレーター自らプレスツアーでひと通り展示を説明してくれたのですが、そのポイントを押さえたわかりやすい説明は、さすが長谷川祐子!という感じでした。

 今回の展覧会は長谷川祐子氏と中沢新一氏の共同企画ということです。記者会見で中沢新一氏は、この展覧会によって我々はいままでになかった新しい展覧会の形を提示することができたと大見得を切ってみせましたが、正直言って「それは少々言い過ぎだろ」と思ってしまいました。トランスフォーメーションという展覧会テーマは確かに面白く魅力的ですが、同様の形式で組み立てられた展覧会はほかにも数多くあるからです。

 いや、でも、面白い展覧会であることは間違いないのですよ。

展示に関しては……

 今回は展示に関しては簡単に触れるに留めておきます。そのほうが実際に展覧会に行ったとき、いろいろなことを感じられるような気がするからです。とりあえず、簡単に2、3点ご紹介しておきます。

ヤン・ファーブル 第15章(ブロンズ)2010
ヤン・ファーブル《第15章(ブロンズ)》2010 (c)JAN FABRE-ANGELOS

 まず、前述したヤン・ファーブル氏の作品の一部。この写真だけだと「なんじゃこれ」という感じですが、ぜひ展覧会で実物をご覧ください。かなり驚きます。そして笑えます。プレスツアーでは、ご本人が作品について説明してくれましたが、とても茶目っ気のあるオジさんで「なるほど、このオジさんならこんなもの作っちゃうよな」と妙に納得した次第です。

スプツニ子! 寿司ボーグ☆ユカリ 2010
スプツニ子!《寿司ボーグ☆ユカリ》2010 Photo:Rai Royal

 次は、スプツニ子!さんの《寿司ボーグ☆ユカリ》。この写真には出ていませんが、実際の作品では腰の回りの白い板に寿司が乗っています。そして……。いや作品についての説明はやめておきます。スプツニ子!さんの場合は、事前にネットで調べた時には何とも判断ができませんでしたが、作品を見てご本人の説明を聞くと「おぉ、なんだ面白いじゃないか」という感じ。今後どんな作品を発表していくのかが少し楽しみです。

 最後に、うっかり写真を撮り忘れたのですが、韓国人アーティスト、イ・ブルさんの作品は個人的にはかなり気に入りました。作品自体はあまり目立たないのでお見逃しなく!。

トランスフォーメーションに考えさせられたこと

 今回の「トランスフォーメーション展」のような企画展を見る場合私は、作品を見て楽しむというより、何を感じたか、何を考えさせられたかという点に重きを置きます。

 「トランスフォーメーション(変身・変容)」というテーマ設定は秀逸でした。展覧会をひと回りしたあと、以下のような思いが頭の中を駆け巡りました。

 私たちは日常生活の中のふとした折りに、他人に違和感を覚えることがあります。多少の意見の食い違いや世代間ギャップ、信奉する思想の相違などは理解できるし許容の範疇です。しかしときどき(しばしば?)理解不能な人物に遭遇することがあります。そんなとき私は、何がその人をそのような考えに導いているのかが気になります。

 ただ相手がちょっとした知り合い程度であれば、その理解不能な言動が気にはなるものの深刻な問題とはなりません。しかし久し振りにあった友人、いや日常的に顔を合わせている配偶者や肉親にさえ違和感(いわば変容)を感じることがあり、それにはかなり驚かされます。場合によってはかすかな恐怖さえ感じることがあるほどです。
 ある日突然、自分の回りの人たちに自分の考えが伝わらなくなる。相手の気持ちも理解できなくなる。そんな悪夢を見たことがある人もきっといることでしょう。

 そして最も恐ろしいのは、周囲ではなく自分自身の変容を実感することです。伝わらない、理解できないのは、周囲が変わったのではなく自分自身が変容したから……。いろいろな経験をするたびに成長するのではなく、徐々に非人間的なものに変容していく自分……。そしてその自分をもはや制御できない……。

 これは恐ろしい。と感じたところで少々身震いして考えるの(妄想)をやめました。

 トランスフーメーション展……。考えさせられるという意味では、かなりいい展覧会でした。

 実際に見てあなたがどう感じるか。ぜひ、お試しください。

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2010年11月19日(金)
文責:NPO法人公共情報センター・福地敏治
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