
石居麻耶さんというアーティストを知ったのは3年ほど前のこと。とあるアートフェアに出品されていた作品を見て、ひと目で気に入りました。
アートフェアというと、とかく奇抜な作品ばかりが目立ち(それはそれで興味深いものもありますが)、強すぎる印象の連続にいささか食傷気味、というタイミングだったことも多少は影響したかもしれません。どういうわけか石居さんの作品を見た瞬間、モチーフが斬新なわけでもなく、色彩が派手でもなく、作品自体も小品なのに、強く惹きつけられてしまいました。
それ以来ずっと気にしていて、昨年に引き続き今年も個展に行って来ました。当初思っていたよりもはるかにいい展示でした。
場所は東京タワーのすぐそば、若手ギャラリスト横井勝利氏が経営するYOKOI FINE ART。

小さいながらもなかなかいい作家を抱えているギャラリーです。今回はタイミングが良く、横井氏と少し話をすることができました。横井氏は、こちらの質問にはていねいに答えてくれるし、奇を衒った作品などはあまり好まない点など共感するところもあり、話してみて今後のギャラリーの展開がますます楽しみになったという感じです。
余談ですが私は、きれいなお姉様が鎮座していて、愛想はいいけど作品や作家について質問しても頓珍漢な答えをしたり、「ほらよっ」という感じで資料しか示さないギャラリーは好みません(まぁ普通は誰でもそうか…。でも意外とそんなギャラリーが多かったりする)。
肝心の石居さんの作品は、去年の発展形という感じ。まだ若い作家さんなので、毎年作品を見ていると、年々進化する様子がよくわかります。
彼女の作品は、基本的には日常の風景の中の光のきらめき、そして影をモチーフとしています。描く対象として選ばれる素材は特別なものではありませんが、その切り出し方と独特の表現方法によって石居麻耶独自の世界が作りだされています。

この日は、石居さんご自身もいらっしゃったので、彼女とも少し話をすることができました。上の写真の一番左の作品を見たとき、夜明けを描いたものなのか明け方を描いたものなのかが判断できず、「どっちなんですか?」と質問するとこんな答えが返ってきました。
「ときどき赤くならない夕暮れがあるんです。これはそんな夕暮れを描いたものです」
そう言えば、日々穴蔵のような事務所に引きこもっている私は、ずいぶん長いこと真面目に夕暮れを眺めたことなどなく、夕暮れは赤いものと決めつけていました。蒼い夕暮れ……。確かにそんな夕暮れもあるのかもしれません。

彼女によると今回の作品は、去年の作品の発展形と新たな試みの作品が入り混じっているということです。そして今年から来年にかけては、モチーフをもっと絞り込んでいき、さらに新しい試みにチャレンジしていきたいと話してくれました。これからどんな光のきらめきを見せてくれるのかとても楽しみです。

石居麻耶さんの個展はもう終わってしまっていますが、彼女は充実したウェブサイトを作成しているので、そちらで以前の作品から今年のものまですべて見ることができます。
絵はもちろんですが、彼女が書く文章も素敵なので「仕事の合間に疲れた頭を休めたい」という時などはお勧めです(ただしトップページはヒーリング系の音楽が流れるのでオフィスで見ようとしている方は要注意です)。
YOKOI FINE ART では現在「永瀬武志 blooming」が開催中です。こちらもご興味があればどうぞ。
